【新卒:業界研究】印刷業界の特徴と動向|今後の課題はなに?

CONTENTS

印刷業界とは?

印刷業界の変遷

印刷業界が取り扱う事業領域

情報コミュニケーション領域

生活・産業領域

エレクトロニクス領域

印刷業界の主な職種と仕事内容

①企画職

②営業職

③技術職

④クリエイティブ職

印刷業界を支える主要企業

①凸版印刷株式会社

②大日本印刷

③NISSHA

④TOMOWEL 共同印刷

印刷業界の動向~現状の課題と将来性~

①紙媒体の減少とデジタル化の移行

②大企業の海外進出

③中小企業は特定分野への注力へ

④環境問題への対応

まとめ

日々目にする新聞や書籍、広告などは人々に情報を伝えるための大切な媒体です。形のない情報を形あるものに変換する印刷という技術は現代社会において必要不可欠なものとなっています。印刷業界はこれまで幅広い業界と連携しながら、経済発展を支えてきた重要な業界です。


本記事では印刷業界について、その全体像や各職種の詳細、業界大手の情報にいたるまで網羅的に解説します!印刷業界とはどんな業界なのか、本記事を通して深く知っていただければ幸いです。


印刷業界とは?



印刷業界は出版印刷と呼ばれる書籍や雑誌の印刷や包装紙へのパッケージ印刷、ポスターなどの商業印刷など、我々の生活に欠かせない印刷物を包括的に扱う業界です。利害関係者が非常に多く、その影響力は広告業界や出版業界など多岐にわたって重要視されています。


「印刷」というとデジタル世代から見れば少しレトロなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、最近ではIoTなど純粋な印刷業だけでなく最新技術にも投資がなされており今後も成長が見込める業界です。


印刷業界の変遷

一昔前までは版に凹凸を掘ってその凹凸にインクをつけ印刷する凸版印刷という、ハンコと同じ原理での印刷が主流でした。その後、版に凹凸がほとんどない「平版印刷」という印刷技術が登場したのですが、これらの技術は手作業の割合が多く印刷業界のレトロなイメージはここからきていると考えられます。


現在ではDTP(デスクトップパブリッシング)と呼ばれるコンピュータ上のレイアウトをそのまま印刷できる技術が発達したため、個人でもより簡単に印刷ができるようになりました。そのため、業界全体として印刷技術に特化するとともに新たな事業展開の必要性が出てきたといえます。最近ではIoTに力を入れており単なる印刷だけでなく、ホログラム等より高度な印刷市場が開拓されているようです。


また、印刷以外にも各企業のニーズに対応して総合的なPR戦略などをプロデュースする総合的なサービスも提供する会社もあり、広告代理店やコンサルタント会社の競合としての一面も持ち始めています


印刷業界が取り扱う事業領域



先述したように、印刷業は汎用性が高いゆえに多方面に影響力があります。その中でも大手企業が手掛けている事業領域について詳しく解説していきます。


領域は主に以下になります。

  • ・情報コミュニケーション領域
  • ・生活・産業領域
  • ・エレクトロニクス領域

情報コミュニケーション領域

出版

雑誌や単行本といった本の出版から、最近では電子出版まで幅広く扱っている事業です。印刷業界の事業のうち最も基礎的な事業領域の一つと言えますが、最近では大手企業では純粋な印刷業にとらわれず、様々な領域へと足を伸ばしています。


マーケティング

WEBや映像コンテンツ、POPなどを通じてマーケティングを総合的にサポートする事業です。印刷技術などを生かして、より効果的に人々へ商材をアピールするにはどうすれば良いかといった提案も顧客に行っていきます。


セキュリティ

証券やクレジットカード、ICカードなど現代情報社会に欠かせない情報管理サービスを取り扱う事業です。例えばクレジットカードのペーパーレス申し込みの仕組みや保険契約情報など顧客情報をクラウド上で管理するシステムの提供がなされています。


生活・産業領域

包装/パッケージ

新たなパッケージの研究開発からデザインまで総合的な提案を行う事業です。紙類はもちろん、プラスチック容器や段ボール包装など多種多様な媒体へのパッケージや包装関連機器の販売等も行っています。


建築材料

単なる材料ではなく、「美しさ」などにこだわった建築材料の提供を行っています。壁紙や木工製品など多くの商品を扱っており、安全・安心で、快適な生活空間を提案します。


エネルギー

印刷やコーティング技術を活用したフィルムや情報記録用の素材、プラスチック製品などを提供します。世界では常に大量のデータが生み出されており、その量は年々増加傾向にあります。そのような情報記録の根幹を支える事業も印刷業界は担っているのです。


エレクトロニクス領域

ディスプレイ

印刷技術を活用し、タッチパネル用の装置やカラーフィルタ、反射防止フィルム等を提供する事業です。スマートフォンなどがさらに普及していく中で、需要が今後も伸び続ける事業領域と言えるでしょう。


半導体

半導体用フォトマスクやLSI設計を行う事業です。LSIとはLarge Scale Integration(大規模集積回路)の意味でおもにコンピュータなどに用いられる電子部品のひとつです。IoTの発展に伴い、単なる印刷技術だけにとらわれない事業展開の一例です。


印刷業界の主な職種と仕事内容



以下では印刷業界における主な職種について詳細に解説していきます。印刷業界と一口に言ってもその業態は多種多様で、ポジションによってはまったく異なる仕事をすることになります。


皆さんにとってどの職種が自分の就きたいものなのか、またどのような職種に興味をもてそうかということを以下の職種別の解説を通して考えてみてください!


①企画職

企画職は企業の販促物に関わるディレクションを行う職種で、ポスターや宣伝用チラシ、パンフレットなどの印刷物に加えて企業紹介映像やウェブサイトなど、多種多様な媒体におけるディレクションを行います。企業の要望に合わせたPRや販促物の広告などを総合的に手がけています。全体のプランニングや市場分析、企業への企画提案・見積もりなどを行うことで企画の実現に貢献します。


②営業職

営業職は企業等のクライアントから情報を集め、新たな事業を発掘します。担当先は官公庁から一般企業まで多岐にわたる場合もあり、様々な業界と印刷業界の橋渡しのような役割を担います。様々な競合他社がいる中で印刷業界ならではの強みを生かした提案を行い、企業にとって最良なプロモーション企画をともに作り上げるための足がかりを作る重要な職種といえるでしょう。


③技術職

技術職は印刷業界がこれまで培ってきた印刷技術を活用して、印刷業界の新たな事業創出の一翼を担う職種です。電子部品やフィルム、パッケージなど様々な商材の根幹を支える技術をもとに、革新的な製品を生み出すことが仕事です。


例えば調光フィルムなど視認性を瞬時に変更できる製品や、カードや紙幣などに利用されるホログラムなど日常生活をより便利で安全なものにしてくれる新技術が生み出されています。


④クリエイティブ職

クリエイティブ職は実際の販促物などのデザインを行うデザイナーや企画職とともにより詳細なデザインプランを考えるディレクターなどが該当します。


企業によっては企画職が兼任している場合もありますが、より販促物に近いところで細かいデザインなどを担当し、クライアントの要望に細部までこたえることができるようチームに貢献します。


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印刷業界を支える主要企業



印刷業界は前述したとおり、広告業界や出版業界など社会の文化芸術を支える一つの柱をになっている業界です。印刷業界が存在しなければ、広く情報を伝播することもできませんし、紙媒体の有効活用も見込めません。加えて最近では建築材料や半導体部品など生活に欠かせない製品を製造している点から、紙媒体が減少していくとはいえ新たな事業をもって新陳代謝が起こり、今後も大きな影響力を保持し続けるでしょう。


そのような印刷業界をけん引する日本の主要企業を以下にまとめてみました。業界のトップを知ることでその業界がどのような方向性で事業を展開していくのかという予想が立てやすくなりますので、一つ一つ丁寧に見ていきましょう!


①凸版印刷株式会社

凸版印刷株式会社は業界最大級の売上高を誇る国内最大手企業です。


最新の有価証券報告書によると、就業人員数(連結)は52,599人で売上高は約1兆4800億円でした。純利益は年々増加傾向にあり、2020年3月期の純利益は870億円でした。


凸版グループは 情報コミュニケーション事業分野、生活・産業事業分野、エレクトロニクス事業分野の3つのセグメントから成り立っており、約200社の子会社と連携しながら事業を展開しています。


現在、凸版印刷株式会社では21世紀の企業像と事業領域を定めた「TOPPAN VISION 21」に基づいた企業倫理を遵守しつつ、環境と安全に配慮した企業活動が推進されていることから、業界最大手として今後も社会変化に対応した経営が遂行されていくと予想されます。


参考:「凸版印刷株式会社」https://www.toppan.co.jp/ir/material/report.html

②大日本印刷

大日本印刷は凸版印刷株式会社とともに業界最大級の売上高を誇る大手企業です。


連結の従業員数は38,181人で売上高は約1兆4000億円でした。純利益は去年から大幅に回復し、2020年3月期の純利益は690億円でした。


DNPグループは「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げており、最近では印刷技術と情報技術を掛け合わせることで従来の受け身の姿勢を脱却することを目指しているようです。主な事業は印刷事業と清涼飲料事業の二つでそれぞれ情報コミュニケーション部門、生活・産業部門、エレクトロニクス部門と清涼飲料部門があります。清涼飲料部門ではアルコール飲料の売り上げが好調なようです。


参考:「大日本印刷株式会社」https://www.dnp.co.jp/ir/library/report/index.html

③NISSHA

NISSHAは特殊印刷を主軸として事業展開を行っている企業です。IMD・IMLと呼ばれる成形同時加飾などを用いて複雑な形状の製品表面に対するプリントも事業の強みとなっています。


従業員数は5718人となっており、2019年12月時点の決算報告書によれば売上高は約1700億円で、純損失は約171億円でした。


有価証券報告書によれば、貿易摩擦等の国際情勢も業績に大きな影響を与えていることから収益力強化策を実施するとのことです。


参考:「NISSHA株式会社」https://www.nissha.com/ir/library/securities.html

④TOMOWEL 共同印刷

共同印刷はNISSHAのような特殊印刷というよりも、総合的な印刷サービスを提供している企業です。


雑誌や書籍の編集企画等、印刷メディアを核としたサービスを提供する情報コミュニケーション部門、データプリントサービスやICカード等のサービスを提供する情報セキュリティ部門、地球環境と安全性に配慮したパッケージや産業資材を提供する生活・資材産業部門など幅広い事業を展開しています。


最新の有価証券報告書によると売上高は約1000億円で、純利益は15億円、従業員数は3230人となっています。


参考:「共同印刷株式会社」https://www.kyodoprinting.co.jp/ir_info/irdata/securities/

印刷業界の動向~現状の課題と将来性~



続いて印刷業界を志す人に知っておいてほしい現状の課題と今後の展開について紹介します。詳しい動向については他サイトに多く掲載されているものの、興味を持ち始めた就活生にとってはまとめづらい情報が多いです。そういった方たちが合う程度把握できるようまとめていますので、より詳しく知りたくなれば自ら情報収集してみるのも良いでしょう!


ここで取り扱うトピックは、①デジタル化、②海外進出、③特定分野注力、④環境配慮になります。


①紙媒体の減少とデジタル化の移行

PDFなど紙媒体をデジタル上で擬似的に再現したような技術の普及によって、これまで人々が親しんできた紙媒体は減少しつつあります。


例えば米AmazonはKindleタブレットなどを通じて、書籍のペーパーレス化を推進しています。公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によれば、2019年の出版市場においては紙媒体が4.3%減少し、それに対して電子書籍は23.9%増加したとのことです。


参考:「公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所」https://www.ajpea.or.jp/information/20200124/index.html

②大企業の海外進出

大手企業は日本市場にとどまることなく、国際市場への進出も積極的に行っています。特にIoT事業においては世界各国で需要が高まっており、例えば決済手段の多様化に伴うセキュリティの強化など、日本企業の技術力が活かされる場面も増えてきています。


また、日本の印刷技術を生かした海外企業の商品パッケージの提案や企画など、印刷業界本来の強みを生かした海外事業展開も考えられますので、これからは日本の印刷会社であろうとも顧客が外国籍の企業であるという場合が十分考えられます。そのため、英語などの外国語を活用した仕事も増えてくるのではないでしょうか。


③中小企業は特定分野への注力へ

中小企業は大企業に比べると顧客の数や生産力が小さいことから、単純な数比べでは競争市場において生き残ることができません。そのため、ランチェスター戦略のように、狭い範囲での事業、つまり特定分野への注力を行うことで生き残る戦略が取られます。


例えば朝日印刷では業界最大手の凸版印刷株式会社や大日本印刷のような総合的な事業展開はせず、主に医薬品・化粧品分野の商品を対象としたパッケージ印刷を得意分野として事業を展開しています。表示文字の正確性などが求められる現場でも対応できるような独自の検品機器を持つことで信頼性を高め、狭い範囲での競争に打ち勝っています。


④環境問題への対応

情報技術が発展している昨今では印刷による紙資源の浪費やインク生成におけるエネルギー消費などが持続可能社会実現に向けて逆行したものしても捉えられています。SDGsなどの国際的な取り組みやESG投資(経済指標だけでなく、企業の総合的な社会貢献度なども考慮した企業評価手法を用いた投資)などの台頭により、企業は環境問題に対してどのような経営判断のもとで対処していくかという意思決定が迫られています。


そのため、印刷業界各社はリサイクル技術や資源燃焼時における有害物質の除去などに投資を行い、よりクリーンな企業体へと路線を変更し環境問題に対応しており、今後は電子ペーパーなどの技術開発や環境に優しい製品作りなどが加速していくと予想できます。


まとめ



印刷業界は従来の印刷業にとどまらず、特殊フィルムやホログラム等のセキュリティ商材、環境に配慮した建築資材の製造など幅広い事業を手掛ける企業へと変化してきました。本記事では印刷業界全体の動向と大手企業の特徴、そして印刷業界の展望について紹介しました。以下に本記事のポイントをまとめましたので確認してみてください。


 ・印刷業界は単なる印刷業から脱却し、印刷技術をベースとした総合的なサービスを提供するようになった
 ・現在、大手企業を中心にIoT技術への投資に力を入れている
 ・SDGs等、経営指標のみにとらわれない事業展開と事業規模に合わせた経営戦略が取られる


本記事のように一つの業界を詳しくみていくと、その業界の構造を体系的に学ぶことができ、自分の思い描くキャリアに近いような職種や企業を見つけることができます。


JobSpringでは業界研究をするときに役立つ方法を以下の記事で紹介していますので、印刷業界をもっと詳しく研究したい方や興味のある業界を深く分析してみたい方はぜひご覧ください!


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編集者

JobSpring Online編集部

後悔のない就活を応援するメディア「JobSpring Online」のメディア編集チーム。

構成メンバー: コンサルタント、人材業界マーケター、学生ライター、etc.

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