【新卒:業界研究】介護業界の現状と今後の課題についてまとめて解説

CONTENTS

介護業界の現状について

介護業界の市場規模は増加傾向

需給バランスがとれていない

介護業界において今後改善されるべき課題とは?

精神的・体力的にきついというマイナスイメージの払しょく

介護報酬改定による労働環境の改善

介護業界を目指す人が知っておきたい今後の展望

社会福祉に対する厚生労働省の動き

介護業界に属する各社の取り組み

まとめ

  • 「介護業界の市場ってどのくらいの規模なんだろう?」
  • 「どんな課題があって、それに対してどんな取り組みをしているの?」

介護業界は他の業界に比べビジネスモデルが特殊な分、その現状や課題について詳しく知られていないことも多いようです。


今回の記事ではそんな介護業界の現状と課題、さらには今後の展望についてご紹介していきます!


  • ・市場はどんな推移をたどってる?
  • ・就活生が押さえておくべき、介護業界の大きな課題は?
  • ・介護業界を目指す人が押さえておくべきトピックって?

といった疑問にお答えしていきますよ!


介護業界の現状について



まずはじめに、介護業界の現状について見ていきましょう。おさえるべきポイントは、


  • ・市場規模が増加していること
  • ・需要と供給のバランスがとれていないこと

の2点です。以下で詳しく掘り下げます。


介護業界の市場規模は増加傾向

介護業界の市場規模はここ十数年で大きく増加しています。その主たる理由は高齢者人口の急増。国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、2040年までは高齢者人口が増加し続けると考えられています。また、高齢者人口の増加に伴って要介護認定を受ける高齢者の数も増加し、介護業界に対する需要の高まりが顕著に見られるのが現状です。


要介護認定者が増加したことにより、厚生労働省の割く介護保険総費用も増加し続けています。2000年には4兆円程度であった介護保険総費用は、2017年時点で10兆円を超えるほど。SMBC企業調査部の調べによると、2025年までにこの額は15兆円を超えると予測されています。


要介護認定者数と介護保険総費用が増加傾向にあり介護の需要もますます拡大していく今後、介護業界の市場規模はさらに増加していくことが予想されます。


需給バランスがとれていない

介護業界の市場規模は増加傾向にあり介護への需要が大きくなる一方で、介護従事者の数は依然として不足状態にあります。


平成28年度時点での要介護認定者数は622名であるのに対し、介護従事者数はおよそ180名。このうち施設で介護を行う介護従事者の約4割と、訪問介護を行う介護従事者の約7割が非正規雇用での就業を行なっています。


実際に現場で働いている介護従事者の中で従業員数に不足感を感じている割合は、施設介護で63.3%、訪問介護で80.2%と深刻です(H28年度の値。令和元年では施設介護69.7%、訪問介護81.2%とさらに増加)。


介護業界において今後改善されるべき課題とは?



現状として需給バランスの取れていない介護業界ですが、今後どのように改善されていくべきなのでしょうか?喫緊の課題を、


  • ・マイナスイメージの払拭
  • ・労働環境の改善

の2点、おさえておきましょう。


精神的・体力的にきついというマイナスイメージの払しょく

人手不足により介護従事者の多くが疲弊している状況です。公益財団法人 介護労働安定センターの調べによれば、身体的な負担を感じる介護従事者は29.5%、精神的な負担を感じている介護従事者は25.6%と、どちらも4分の1を上回ります。


さらに平成30年度1年間での介護職員離職率は15.4%(全業界での平均14.6%)と平均を上回っており、精神的・体力的なきつさゆえに職を離れる介護従事者も多いようです。


このような理由から介護職に対するマイナスイメージが大きく植え付けられてしまっており、このイメージを払拭するのが喫緊の課題と言えるでしょう。


介護報酬改定による労働環境の改善

また労働条件に対する悩みや不安として、業務内容に賃金が見合っていないと感じる介護従事者も全体の39.8%にのぼりました。


一般に離職率が平均を上回ってしまう原因の一つとして、仕事内容に対する給与の少なさや労働環境の悪さが挙げられます。一方で介護業界では、介護従事者の勤続意欲は年々上昇しており「今の勤務先で働き続けたい」と感じている従事者は全体の58.9%と、人間関係や休暇取得等の労働条件は悪くない模様。賃金に対する不満が離職率を高めていると考えられます。


2021年度に介護報酬の改定が行われる予定です。この改定を機に賃金改正を行い、労働環境を改善することが介護業界の課題として突きつけられている現状です。


なお、介護業界のビジネスモデルに関しては以下の記事で詳しく説明しています。合わせてご覧ください。


【新卒:業界研究】介護業界の特徴|ビジネスモデルから仕事内容まで一挙解説


介護業界を目指す人が知っておきたい今後の展望



介護業界では解決すべき課題が突きつけられている現状ですが、業界はこれらに対してどのような取り組みを行なっているのでしょうか?介護業界を目指す人が知っておきたい今後の展望を、厚生労働省の取り組み各社の取り組みの2つに分けてまとめて説明します。


社会福祉に対する厚生労働省の動き

「2025年問題」というキーワードを耳にした頃はありますか?これはいわゆる「団塊の世代」と呼ばれる世代層が2025年に75歳以上となり、国民の5人に1人が後期高齢者に分類されることで生じる種々の問題を指摘する言葉です。具体的には、社会保障費の急増や医療・介護分野における施設・人員の不足が懸念されています。


この問題に対処するべく、厚生労働省は「地域包括ケアシステム」の構築を目標として定めました。これは、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制」(厚生労働省HPより)の構築を推進するもの。2025年をめどに住まい・医療・介護・介護予防・生活支援の全てが一体的かつ継続的に提供されるようなシステムを作りあげようという取り組みです。


また厚生労働省の取り組みは、市民を取り巻く環境の改善だけにとどまりません。厚生労働省の試算では2025年までに介護従事者は34万人不足すると言われておりますが、差し迫る人材確保の必要性から政府は外国人人材の受け入れ推進の制度を敷設しています。2008年には協定国との経済連携強化を目的とした経済連携協定(EPA)が結ばれ、介護福祉士の資格を取得した外国人労働者は永続的な滞在が可能になりました。さらに2017年には外国人技能実習制度に介護職種が追加されるほか、介護現場で外国人が働くための在留資格「介護」が就労ビザとして認められました。


このように、社会福祉の充実に向けて政府は様々な取り組みを行なっています。これらの動きを捉えつつ、介護業界の今後の展望について考察を深めておくと良いでしょう。


介護業界に属する各社の取り組み

介護業界に属する大手各社では人材不足と労働環境の改善を目標に、

  • ①徹底的な効率化の推進
  • ②介護サービスの質の向上
  • ③介護保険収入以外の収入源の確保

の3点に力点を置いて取り組みを行っています(SMBC企業調査部『介護業界の動向』より抜粋)。具体的な企業を取り上げ、その取り組みを見ていきましょう。


<SOMPOホールディングス>

介護業界での売上高2位を誇るSOMPOホールディングスでは、主に以下のような取り組みを行っています。


①AI等の技術活用により人手が必要とされていた業務の効率化を図り、さらにデジタル技術を向上させるべく米国シリコンバレー企業とのネットワーク構築を進める。


②デジタル技術(IoTやセンサー)の利用によりモノとインターネットを結びつけ、顧客の体験満足度を向上させるサービスの開発を実施。


③介護・ヘルスケア事業だけでなく国内外での保険事業を押し進めることで、収益のさらなる向上を目指す。


<ニチイ学館>

介護業界売上高で第1位となるニチイ学館では、以下のような取り組みがなされているようです。


①従来ケアマネージャーが行っていたケアプランの作成をAI化するべく、NEC Corporationと連携・開発。


②介護サービスの向上を目的とした「介護研究大会」を実施し、全介護拠点で共有。


③介護事業のほか、保育・医療関連・ヘルスケア・語学教育・セラピー事業など幅広く事業を展開し収益を向上。


まとめ

今回の記事では介護業界の現状と今後の課題について紹介いたしました。


・市場規模は増加しているが需要に対し供給が追いついていない状況。
・負担が大きいというマイナスイメージの払拭と労働環境の改善が喫緊の課題。
・これらの課題に対し大手各社だけでなく政府も取り組みを行っている。


特に最近ではアフターコロナの働き方が見直され、介護・福祉分野での働き方改革もより求められるようになりました。業務の効率化を目的としたAIの導入などは幅広くみられるようになるでしょう。今後の動向にも注意が必要な業界です。


就活のプロに相談してみる 就活のプロに相談してみる

編集者

JobSpring Online編集部

後悔のない就活を応援するメディア「JobSpring Online」のメディア編集チーム。

構成メンバー: コンサルタント、人材業界マーケター、学生ライター、etc.

TOPIC

新着記事
就活のプロに相談してみる